公館長挨拶

令和4年1月6日

 

  
駐バルバドス日本大使の品田光彦(しなだてるひこ)です。
最近のバルバドス情勢についてご報告したいと思います。
 
まず特筆すべきなのは、昨2021年、君主制の国だったバルバドスが共和国になるという国家体制の変更が行われたことです。
バルバドスは、1966年の独立以降、旧宗主国である英国のエリザベス2世女王を憲法上の国家元首とする君主制国家でしたが、独立55周年記念日に当たる昨年11月30日をもって共和制に移行しました。これに伴い、新しい元首として大統領職が置かれることになり、それまで英国女王の「代理」としてバルバドス総督を務めていたサンドラ・メイソン女史が共和国の初代大統領に就任しました。「バルバドスにはバルバドス人の元首を」という、国民の多くが長年抱いてきた願望を、ミア・モトリー首相のリーダーシップのもとで平穏裡に実現したバルバドス国民の皆さんにあらためて敬意とお祝いの意を表したく思います。なお、共和制への移行後も「バルバドス」という国名に変更はなく、また、従来からこの国が属していた英連邦(コモンウェルス)に引き続き留まるという方針が明らかにされています。
(*共和制移行についての詳しい経緯などについてはhttp://www.apic.or.jp/projects/barbados001.htmlをご覧下さい*)
 
次に、やはり新型コロナ感染症について触れなければなりません。
日本や世界の他の国々と同様に、バルバドスも新型コロナとの戦いを続けています。公共の場所等でのマスク着用が義務づけられ、大きな集会やスポーツイベント等は規制対象となっており、また入国に際してはPCR検査陰性証明の提示が義務付けられるなどの措置が続いています。本年1月2日の時点では、一昨年の新型コロナ発生以降の感染者数累計が29,160人、死亡者数累計が262人となっています。
(*当国における新型コロナ感染症をめぐる最新の状況や入国規制の詳細については、当大使館のホームページの関連項目をご覧下さい*)
バルバドス政府は積極的なワクチン接種を国民に呼びかけており、現在のところ2度のワクチン接種率は人口の4割ほどになっていますが、未だ十分とは言えません。日本は、当国におけるワクチン接種率向上のため、昨年中2回にわたり他の主要国と歩調を合わせてCOVAXファシリティーを通じたバルバドスへのワクチン供与に貢献しました。
 
新型コロナ感染症の拡大を防ぐ努力が大切なことは言うまでもありませんが、このような中でも日本とバルバドスの間の人的交流を絶やさないようにすることが大切です。昨2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックには、コロナ禍の困難な状況の中、バルバドスからも十数名の選手団が訪日しました。残念ながらメダル獲得には至らなかったものの、日本側の円滑な大会運営や選手村の快適さにはバルバドス・スポーツ関係者たちから賞賛と感謝の声が聞かれました。
また、日本の「文部科学省(MEXT)国費留学生」や「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」にも多数の応募者があり、選抜されたこの国の青年たちが無事訪日し、それぞれの学業、仕事に取り組んでいることも嬉しい出来事です。
 
外貨収入の多くを観光に依存するバルバドスは、新型コロナ対策とのバランスを取りながら外国からの観光客に門戸を開き続けています。とは言えコロナ以前に比べれば観光の低調は否めず、経済はかなりの打撃を受けています。たとえば、昨年1~9月期の観光セクター収入は対前年比で65%の減少、昨年10月時点での失業率は約16%、対外債務の対GDP比率は47.5%などとなっています(バルバドス中央銀行発表による)。
さらに昨年4月には隣国セントビンセントで起きた火山噴火による火山灰が当国にも達し、また7月のハリケーン・エルサで広範な被害が出るなど、新型コロナに加えて経済を圧迫する自然災害があり、バルバドス経済はたいへん苦しい状況にあります。  

当大使館としては、コロナ後も見据えて、この国の経済再建のためにできることを行いつつ、日本と、あらたに共和国になったバルバドスが、平和を愛し自由と民主主義を尊重する、基本的価値観を共有する国同士として今後も友好・協力関係を一層強化していけるよう努力を続ける所存です。  

当大使館は、通常通りの業務を続けています。ご質問や何かお困りのことがあれば遠慮なくご連絡下さい。
(代表電話: +1-246-538-5700、Eメール: barbados@rt.mofa.go.jp)
 
令和4年1月
駐バルバドス日本国特命全権大使 
品田光彦

 
<略歴>
1957年生まれ。都立戸山高校、慶應義塾大学経済学部を経て1979年外務省入省。外務本省では総合外交政策局(外交政策調整官)、国際協力局(開発協力総括課企画官)、大臣官房(人物交流室長)等、在外においては在ユーゴスラビア大使館、ボスニア・ヘルツェゴビナ上級代表事務所、ニューヨーク国連日本政府代表部、在オーストリア大使館、在セルビア大使館等に勤務。2016年10月より駐バルバドス特命全権大使。